2015年8月15日土曜日

【短期連載その17 土と埃と油のにおい】



昨年の3月に亡くなった祖父は大変無口な人でしたが、時々どこでスイッチが入るのか、戦時中の話を延々と話すことがありました。呉で軍艦を作った話だったり、豊川の海軍工廠が爆撃された話だったり、その時自分はちょうど豊川にあった機械を疎開させていた話だったり、内容は細切れで知らない人がたくさん登場して、祖父の一人何役もの会話形式だったため、前後がよくわかりませんでしたが、戦時中を確かに生きていた人の話だなあと思った記憶があります。

頭の中にあることを相手に正確に伝えるというのは難しく、相手のいう事を正しく受け取ることもまた難しい。そんな中で話し手と聞き手の距離が時間的に遠ざかれば遠ざかるほど、聞き手が自分に都合のよい解釈をするようにならないか、時々心配になります。誰でもみな自分というフィルタを通して世の中を見ているけれども、時々立ち止まってそのフィルタが気づかないうちに濁っていたり偏ったりしていないか、気をつけていたいなあと思います(じいちゃんの話に比べてなんと抽象的なことか)。拙く歯がゆいですが、いつもの日常がこれからも続いていくことを祈るばかりです。


【備忘録】

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ポニーキャニオン 2013-03-20
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戦争の記憶がまだ新しいころの映画。メインは戦後に作られた黒四ダムについてですが、戦時中作られた黒三ダムの過酷な環境も印象に残りました。CGなしで(だからこそ)の迫力に圧倒されます。

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